高校野球の変革と集中力向上~浦和実の挑戦~
第 97 回選抜高校野球大会に初出場する浦和実。同校野球部は、練習時間の短縮、メニューの固定、頭髪の自由化などの変化をもたらし、選手たちの集中力が向上しました。

浦和実高校野球部の変革と集中力向上
浦和実高校野球部は、創部から半世紀が経過し、ついに聖地への出場を果たしました。同校野球部 OB の田畑富弘部長と恩師・辻川正彦監督は、「今までと同じことをやっていてもその先には行けない。何か変えないと駄目だ」と考え、チームに変化をもたらしました。
限られた環境での利点活用
練習時間を短縮し、指揮官は「本当は質より量派だけど、だらだらやっても今の子たちは駄目」と例年、8~17 時だった夏の練習を熱中症対策も兼ね 7~14 時に変えました。メニューを固定し、進行が早ければ時間を待たずして終了することもあります。中堅手の斎藤颯樹は「準備や片付けも声をかけて分担するようになって、だいぶ練習にめりはりがついた」と語っています。そうして生まれた時間を身体のケアや学業に回す選手も多く、より全体練習への集中力が高まりました。
メンタルビジョントレーニング(MVT)の導入
3 年ほど前から田畑部長が導入したメンタルビジョントレーニング(MVT)の成果も花開き始めました。眼球運動能力を鍛えることでミート力・選球眼の向上が期待されるほか、周辺視・瞬間視能力が上がると集中力アップや状況判断の速さにつながり、プレーの質の向上が見込まれます。ネクストバッターズサークルで MVT の動作をルーチンとする捕手兼内野手の平山倖大は「速い球に反応できるようになったし、落ちる球の見極めも良くなった」と効果を実感しています。田畑部長によると、MVT テストの結果が良い選手は打率も比例して上向きだということです。
公式戦メンバーを「選手間投票」で決める
公式戦メンバーを「選手間投票」で決めたのも、この代が初めてです。投票は指導者が定めたポジションの割合など一定のルールに基づき記名式で実施されました。指導者枠 2~3 枠を確保していたが、過去 3 度の投票で一度もその権利は使われなかったことです。技術か私生活か選考基準は分かれるが、小野蓮主将は「仲間からの評価だから納得感もあるし、私生活も練習も手を抜けない」と語っています。一人一人の責任感が問われる中、選び、選ばれ、自分たちの目で見て決めてきたのです。
選抜メンバーの投票を行った 2 月 11 日、辻川監督は練習中の教え子たちを眺めながら「一番大事なのは普段。実力はその次。高校野球ってのは結構、生きざまが出るから面白いんだよなあ」とつぶやいていました。選手を信頼し、変化を受け入れ手にした甲子園切符だったのかもしれません。