大相撲春場所 12 日目:高安のメンタル課題と優勝争い
高安は土俵際で詰めの甘さを見せたが、押し出しで勝利し 10 勝目を挙げた。大の里は尊富士に押し込まれながらも、はたき込んで勝った。残り 3 日、優勝争いはまだまだ波乱がありそうだ。

高安は土俵際で詰めの甘さを見せた。左を差して、右でまわしを引く万全の形になり、そのまま押し切れるかと思われたが、自分からまわしを離して王鵬に逃げられ、バタバタした感じになった。
その場面を見て、少し心配になったファンの人もいただろう。高安にすれば、王鵬の腰が重いので、寄り切るよりも、まわしから手を離して押し出した方が、より確実に勝てると思ったのかもしれない。
王鵬に回り込まれて逃げられた分、少し勝負の時間は長引いた。ただ、相手に態勢を立て直す隙を与えず、どんどん突いていって押し出した。
内容的には高安の一方的な相撲。体調の良さを感じさせるように、立ち合いの当たりも威力があったし、体もよく動いていた。
それでも、何度も言うように優勝争いをする力士の本当の勝負は、13 日目からの 3 日間。特に高安はメンタルが課題。賜杯を意識し出すと途端に動きがぎこちなくなる。残りの 3 日を簡単に乗り切れるほど余裕もないはずだから、応援している人たちはハラハラする時間が続きそうだ。
大の里は尊富士に押し込まれながらも、はたき込んで勝った。
危なそうな相撲内容だったが、見た目以上に、大関には余裕があったはずだ。
勝負のポイントは立ち合い。先に手をついて態勢を整えた大関が、相手を待つ形になった。
いつでも立てる状態の大関に対し、尊富士はそれ合わせなければならなくなった。
大の里に促される形で手をついた尊富士は、その分、立つのが一瞬遅れた。
当たった後の二の矢の足も遅れた。
大の里には相手の足が前に出てこないのが、見えたに違いない。それで咄嗟(とっさ)に、はたいたのだろう。精神的に大関に、余裕があったように見えた。
これで 2 敗のトップに大の里と高安が並び、3 敗で玉鷲、尊富士、安青錦が続く展開となった。
番付的には大関が優位だろうが、高安も尊富士も安青錦も、40 歳の玉鷲もまだ可能性は残している。玉鷲は常に真っ向勝負を貫く力士だけに何か起こしそうなムードもある。
残り 3 日、まだまだ一波乱も二波乱もありそうだ。